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「……覗いてんじゃねぇよ、ダサ女」
同じフロアで向き合う私と、完全に目が据わっているような状態の戸田さん。
決して怒鳴られてるわけではないのに、その声は『りか』って人と言い争ってる時よりも鋭くそして荒く感じた。
この様子じゃ、完全にキレてるわよね?
「……の、のぞいてたわけじゃないわよ」
そりゃあ、ちょっとはこの男の弱味でも見つけてやろうって思ったけど。
「へぇー。じゃあ、ここで何してんだよ」
「なにって……私は、叔母さん家に」
どんどん小さくなっていく自分の声。
ハッと息を飲むと、私が答える前に帰ろうとする戸田さんの肩がすれ違いざまにドンと軽くぶつかる。
「最低だな、オマエ」
威圧的な態度と氷のように冷たい言葉。
この一言が、今日一日の中で一番私の心を抉った。
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