第1話

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「ぼぉーっとしてないでこの書類まとめろよ」 「……わかってるわよ」 窓際にある社長の机の脇に並んだ2つの机。 神山さんが居た時はそこまで感じなかったけど、この男の横で仕事をしていると自分の仕事の遅さに苛立ってくる。 同じ時間で倍は仕事をこなすこの男を、一度でいいから負かしてみたい。 この男がここに着任してからというもの、その要領のよさに私はほぼ毎日そんなことを思っている。 ……けど、現実的には難しいのよね。 「女はいいよな。……あ、でも違うか」 「え?」 「何でアンタみたいなのが秘書なんかしてるんだ?」 ……こ、この男。喧嘩でも売ってるのかしら? フンと気取ったように上から言うこの物言いに、毎回イラッとさせられる。 年下だからとか後輩だからとか、そういう謙虚さがこの男にはない。 「会長がどうしてもって言うからこっちに移ったけど、アンタここに居る意味ある?」
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