百合です閲覧注意

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春先の陽射しが心地好くなってきた朝の事。 「ぅ…」 うっすらと目を開け、回りを見回す。 …僕の部屋じゃない。 寝起きで靄が掛かったように回らない頭を軽く振りつつ考える。 ――あぁ、そうだ。昨日てまり の部屋に泊まりに来たんだ。それで床に入って睦みあって……… あぅ…思い出したら恥ずかしくなってきた。 ちら、と横を向けば穏やかな寝息を立てる恋人の寝顔が目に入る。 暫くその寝顔を見詰めて、 「おはよう、てまり」 そう声を掛けると、てまりはぴくりと身を震わして、瞑っていた目を薄く開いて、 「御早う華蓮さん。」 僕の大好きなふわりとした笑みを浮かべて囁いてくる。 「えへへ。」 其が嬉しくて、からだを彼女に寄せて、額にキスを落とす。 「あらあら、まだ起きなくて平気ですの?」 「構わないよ。どうせ休日だもの。」 だから、もう少し甘えてていいよね? と、言外に告げながら、口付けを交わす。 激しくも熱くもない、親愛の情を伝えるための優しい啄むようなキスを。 やさしく僕を抱き締める彼女を感じながら、今を此からを一緒に歩める幸せを願って。 「……てまり。」 「なんですの?」 「んーん。呼んでみただけ。」 「あらあら。」 「………てまり、キスして?」 「えぇ。」 ――こうして、僕らは お互いの肌の暖かさと春の麗らかな光に包まれて、微睡みに溶けるように優しく抱き合っていたのだった。
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