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「あの、高辻さん」
神妙な面もちの私の声色に高辻さんはぴくりと眉を寄せ、箸を止める。
「何だ」
人二人分離れた位置で私は高辻さんと視線を交わした。
私の目の前では越智と赤池さんが未だ言い合いをしている。
その声もやがて遠くなり、私は高辻さんに集中した。
「昨日の件はどうなりましたか」
その問いに高辻さんはふっと鼻で笑い薄ら笑いを浮かべる。
「お前は回りくどい聞き方をするな。要は蘆名はどう動いたか、聞きたいのだろう?」
腕組みをする高辻さんに対して私は口を紡ぎ答えなかった。
代わりに視線だけを送り続け、次の言葉を待った。
正確には、最初に私が質問した答えを待った。
するとそれを悟った高辻さんがふう、と深いため息をつき、深刻そうな顔色で告げる。
「蘆名から褒美を授かることになった」
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