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両者間合いを詰めようとした刹那───
頭上から緩やかな声が降ってくる。
「何してやがる。落ち着けよ、お前たち」
ぴたり。
その声に謎の男たちは二人して動きを止めた。
突然の登場人物に波風と鷹司も警戒心を働かせ静止する。
そんな中、越智がぐったりと起きあがった。
高辻に止血をしてもらい、血は止まったものの痛みは引かない、当然だ。
苦い顔で舞い降りた男を見やる。
着物姿の男は闇夜の中、他の男どもには目もくれず、ただ一人を見つめる。
そして艶っぽい声音で、
「久しぶりだな、嬢ちゃん」
波風を見やり、微笑んだ。
声をかけられた波風をその場にいる者の全ての視線が注がれる。
波風は、波風の瞳は酷く揺らいでいた。
“嬢ちゃん”
その呼び方で身体が震えだした。
「見ない内に色っぽくなったな」
しかし波風は相手が誰なのか分からない。
ただ、遠い昔に会ったことがあるような感覚はある。
高辻が着物姿の男を睨み、問いかける。
「貴様等は何者だ」
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