第六節 血族

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 着物姿の男は高辻をちらりと見、そして傍の越智に視線を移す。  その瞬間、綻んでいた目が殺気に満ちあふれた。 「鬼の偽物が………」  ドクン!!  波風と高辻の鼓動が高鳴る。  “鬼”  今確かにそう言った。 「我がの名は楢崎辰成(ならさきときなり)。純血の、」  “鬼”だ。  雲に隠れていた月が、波風たちを照らし互いの顔を露わにした。  月夜の晩。  彼等が出会うことにより、戦乱の世は今にも増して荒れ狂うことを、この時誰も予想していなかった。
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