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人影は下半身に重心を落とし、速度を落としてかけ男との距離をとった。
(誰…)
暗闇に身を潜めつつ人影は眉を潜める。
自分の計画を邪魔され、気にくわないらしい。
眉間のしわがそう語る。
人影に狙われた男の足取りもあわだたしくなっている。
「な、何ゆえ貴様等、此処に!」
男の慌てた声色が響く。
それに答えたのは複数の人影を連れた一人の男性だった。
「上杉の家臣、水戸だな。貴様こそ何故こんな無法地帯に?」
「ぐっ…そ、それは…」
口ごもる男を見下ろす男性は月明かりに照らされる。
さらさらでうねりのない真っ直ぐな短髪、鋭い瞳も漆黒に輝く。
気高さを感じるその貫禄に人は息をすることも忘れる。
後にこの戦乱の世に改革を起こす軍隊の総大将となる男との出会いだった。
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