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全ての始まりは一通の手紙だった。
「俺宛の手紙か。ん、名前が書いてないな。怪しい塾からの勧誘、それとも知らない奴からのイタズラか」
そう愚痴を溢しつつ、綺麗に封された手紙を開ける。
中身は、綺麗に折りたたまれた一枚の便箋。手紙独特のワクワク感を感じながら書いてある文字に目を通した。
紅 エンジ 殿
プロセスの腕輪を盗め。
さもなくば、エンジ殿のシャーシンを一本盗む。
そんな内容だった。
この『プロセスの腕輪』という物体は最近のテレビで話題になっているお宝である。
砂浜に打ち上げられていたそうで、多大な人数の研究者が躍起になって『プロセスの腕輪』を調べたと聞いている。
しかし、どうも不可解な物体のようだ。
金や銀やダイヤモンドにも似つかない金属で構成されているらしく、製作された時代ですら特定できないでいるらしい。
謎の物体だ。
それと共に神秘的な物体だ。
無論、値段などを付けられるはずもなく、今は頑丈な金庫に保管されているはずだが。
「『プロセスの腕輪』なんて見るだけでも厳しいっていうのに、どうやって盗めって言うんだよ」
どうせ誰かのイタズラだ、それにシャーシンの一本や二本盗まれたところで俺の人生に何の影響も無い、そう吐き捨てた。
手紙独特の、手紙を読み終えた後の消失感に焦れながら、ぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱へ放り投げた。
鞄を持ち、いつもの日常へ。
「行ってきます」
俺はドアを開けた。
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