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最初の手紙が届いてから、すでに数週間が経過した。
そして、日付が変わるごとにリスクが大きくなっているように感じた。
いや、実際にそうだ。最初はシャーシンの一本だったが、今では自転車のサドルを盗まれるようになった。
ここまでの被害になると、警察を頼るしかない。
しかし、頼っているにも関わらず盗まれるという非常に不可解な現象だった。
これほど上手く盗むなら、自分で『プロセスの腕輪』を盗みに行けば良いのに。
心の中で思うが、盗難に終わる兆しは見られなかった。
「全く……どこのどいつが手紙を送ったり盗んだりしてんだよ。でも、どうして俺なんかに『プロセスの腕輪』を盗ませたいんだ?」
若干の赤みがかった黒髪と瞳、それ以外に他と変わらない人間に、国宝レベルのお宝を盗ませる理由が分からない。
仮に俺が『プロセスの腕輪』を盗んだとして、その後の人生が狂ってしまう事は明確である。
そもそも、保管してある場所などの情報が欠けているのであれば、盗もうにも盗めない。
大きくため息を吐きながら、
「このまま俺の私物は盗まれ続けるのか。手紙を送ってる奴は何を考えているんだよ……」
再びため息を吐きながら、いつもの通学路を辿った。
制服を整え、学校の校門を潜る。
教室。窓際の席。初夏の青々とした景色を満喫する。
だが、最近はなにかと物騒だ。あれはテロの対策なのか、遠くの方には戦車のような兵器が設置されている。
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