北京小景

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同室の、晴美姉さんがキレた。 「あんたねー、いっつも私にくっついてたら、全然上達してないじゃん! 一人でどっか行ってこいっつーの!」 長期留学の経験もある、アネゴ肌の人が。 ものすごく面倒見のよい人が。 とうとうそう言ったのである。 どれだけ甘えてたんだ自分。 確かに、一人で外出も出来ないなんてなんのために来たのかわからない。 「ぱ、パンダ見てきますっ」 「うむ」 ガイドブックを抱えて行こうとする私に追い討ち。 「ガイドブック持って街ウロウロする気か?ボラれる、スラれる、タカラレル!」 ひいい。 「メモって行きますっ」 北京動物園に行くバスの路線と、道を聞く例文を写し、唱えた。 「あと、あんまビクビクすんな、大金は置いていけ」 姉御の指示が飛んだ。
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