北京小景

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雪音(ユキオト)ー!」 門を出ようとしたところで、ブンブンと手を振られた。 やっべ、見つかった。 来んな。 犬っころみたいに寄ってくんな。 が、聞こえてないフリするには、目が合ってしまってた。 「雪音、どこ行くー?」 「ユキオト、違う。《シュエイン》、or ユ、キ、ネ!」 顔を覚えられて、話かけてくる男の子。 リーツイ。日本語学科の二回生だ。 留学生で自分より年下が珍しいようで、 子供扱いしてくる。 私も、ムカついても言い返す語学力が無いので、パンチしたり(当てないけど) するから、余計に.... 周りから 《おいそこの子供達》 とか言われる始末。 日、中、韓語が入り乱れてても、言われてる言葉は同じだとわかる。 「シュエイン?」 柔らかい声が後ろからかかった。 「ジンルーファン!」 彼は三回生で、私の留学中の家庭教師。 穏やかな彼の話し方が大好きだった。 紹介してくれたのは晴美姉さん。 彼は、ゆっくりと中国語で喋ってくれる。私が反復して、分からなくて辞書引いてても待っててくれる。 《書こうか?》 と、筆談を促してくれる時もある。 穏やかなのが、東北出身のせいか彼の性格なのかはわからない。
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