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部活の後輩から花束を貰う卒業生。
先生に挨拶をする人。
東棟と生産棟を繋ぐ渡り廊下を歩きながら、生徒玄関前の光景を高広と見ていた。
「なんで学校の中を歩いてんだ?もう帰ろうぜ」
卒業証書を入れた筒を、ポンポン言わせながら、高広が退屈そうに呟く。
「良いじゃない。最後なんだからさ、この学校にもお別れしなきゃ……」
「そんなもんか?いつ来てもここにあるんだからよ、別にそんな事しなくても良いと思うけどよ」
この渡り廊下一つ取っても思い出があるよ。
「赤い人」に見付からないように、身を低くして移動した。
長い廊下だって、どこから見られているか分からなくて恐怖した。
人生の中で、何度も死ぬ事なんて経験出来る事じゃない。
生産棟を歩いて工業棟。
ここの廊下にも思い出はある。
取り憑かれた健司と遭遇して、高広が足止めしてくれたよね。
誰もいない、窓から光が射し込む廊下。
思い出を探す……と言うより、皆を探していたのかもしれない。
一緒にこの日を迎えたかった皆の姿を。
だけど、どこを探しても私が求めているものはなくて。
高広と二人、生徒玄関へと向かった。
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