最終日

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他の声に掻き消されそうな、小さな声。 だけど……その声を忘れるはずがない。 「ん?どうした明日香」 立ち止まった私に、不思議そうに声を掛けた高広。 「今……声が聞こえた」 振り返ってみても、人が多過ぎてどこから聞こえたのか分からない。 「森崎さん、もしかして……」 小川君も、私の異変に気付いて呟く。 「聞こえたの……今聞こえたんだよ!留美子の声が!」 どこ? どこにいるの? 私の前に姿を現してよ。 「本当にありがとう!!私達を忘れないでいてくれて!」 また聞こえた。 どこにいるのよ! こんなに人が多かったら分からないよ! 「留美子!!どこにいるの!?教えてよ!」 胸が苦しいよ。 一目で良いから会いたいのに、姿が見えないなんて。 「も、森崎さん……あそこ!」 キョロキョロと辺りを見回す私の肩を叩き、指差した小川君。 その指が示す場所は……東棟の屋上。 「卒業おめでとう!!」 そこには、私に手を振る留美子達の姿があったのだ。 遥、美雪、武司、健司、そして八代先生。 やっと……やっと皆に会えた。 「お、おーい!おーい!袴田君!!僕、頑張るから!誰にも負けないように頑張るから!!」 号泣しながら手を激しく振る小川君に、武司が軽く手を上げる。 「皆!こっちこそありがとう!!皆がいたから『呪い』が解けたよ!!忘れないから、絶対に忘れないからね!!」 感情が目から溢れ出て、ボロボロと頬を伝って流れ落ちた。 それを聞いたからか、皆はスーッと煙のように消えてしまったのだ。 「皆……本当にありがとう」 最後に会えた。 私が卒業するこの日に。 これから先、私が忘れる事はないだろう。 人の為に死んで、誰の記憶にも残らなかった友達の事を。 私が想い続けている限り、いつでも会えると思えるから。 これが、私と友達が生きた悲しい日々のお話。 二人の少女と、その「呪い」に翻弄された私達の高校生活でした。 …end
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