3人が本棚に入れています
本棚に追加
茶房の緑のドアは色褪せていた。
それだというのに荒れた印象はなく、丁寧に年を重ねた佇まいだった。
茶の香りが出迎えてくれる。
店員と思しき少女が、声をかけた。
『いらっしゃいませ』
という意味だろう。
一度顔を上げただけで、茶葉を袋詰めする作業に戻った。
透明な筒型のガラス瓶に茶葉が入れられている。
並ぶそれらは不思議に静謐で
標本室に迷い込んだような錯覚を覚えた。
日本茶と、そう変わらないように見える。
中国茶といえばもっと茶色い、烏龍茶だと思っていた。
『白茶』
『黄茶』
『黒茶』
『針茶』
白い紙に繊細な文字が宿っていた。
これが標本を思わせたのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!