丘の上の茶房

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茶房の緑のドアは色褪せていた。 それだというのに荒れた印象はなく、丁寧に年を重ねた佇まいだった。 茶の香りが出迎えてくれる。 店員と思しき少女が、声をかけた。 『いらっしゃいませ』 という意味だろう。 一度顔を上げただけで、茶葉を袋詰めする作業に戻った。 透明な筒型のガラス瓶に茶葉が入れられている。 並ぶそれらは不思議に静謐で 標本室に迷い込んだような錯覚を覚えた。 日本茶と、そう変わらないように見える。 中国茶といえばもっと茶色い、烏龍茶だと思っていた。 『白茶』 『黄茶』 『黒茶』 『針茶』 白い紙に繊細な文字が宿っていた。 これが標本を思わせたのかもしれない。
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