丘の上の茶房

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しゅん 湯気が噴き少女は立ち上がった。 ガラス瓶の蓋を開け、匙で紙に掬いとる。 それを、すっと突き出した。 どうしたものかと思う。 茶葉を買うつもりで迷っているように見えたのだろうか。 ただ、字面を追っていただけなのに。 それでも、綺麗に揃えられた指先と、黒髪をきっちりと結わえた少女に、拒絶は躊躇われた。 『触れてもいいのか』 そんな表情が浮かんでいたのだろう。 少女は、笑みを浮かべ、紙を持ち上げた。 顔を少し近づけて、紙を揺する。 十字に折り目の付けられた紙の中央に茶葉が集まる。 少女は再び紙を私に差し出した。 先ほどと違うのは腕を伸ばし、持ち上げていること。 真似をして、顔を近づける。 ふっ と香りがたつ。 顔を上げると少女は背中を向けていた
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