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「……いや、ちっちゃいんだなって思って」
「ああ……」
え、そうかな、とか、―――。
そうなんだよね、なんて、―――。
肯定も否定も出来なくて落ち着きもないまま、気もそぞろ。
「う、ううん……」
キャパオーバーの私が返せたものは、返事なのか呻いただけなのか。何とも情けない声しか出せなかった自分が悲しいくらい切なすぎる。
「入江が着ると、体操服、でかいね」
袖も、丈もぶかぶかで。
「まあ、女の子は小さい方が可愛いけど」
そんなこと、さらっと言えちゃう藤木くんに……何ていうか…ほんの少し悲しくなってしまった。
そっか、退屈しのぎにからかわれてるだけか。
「……寒かったから」
さっきまでの緊張感が急にふっと解けた。
私は曖昧に笑いながら、視線を交わすのも億劫に思えてきて、相変わらず境内を叩きつけては流れ出す雨水の行き先を目で追っていた。
ほんと、体操服に着られてる感じがする。
「……助かった」
こんなに大雨の降りしきる中。湿度も潤いも十分間に合ってるはずなのに。
「ありがとう」
だけど、―――。
どうして喉がこんなにカラカラなんだろう。
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