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「ほら、―――」
「え……?」
目の前に差し出されたのは、スポーツブランドのロゴの入ったジャージの上着。
「寒かったら着てもいいよ」
わざとぶっきらぼうを装い澄ました視線を向けてくるのに、口調はすごく柔らかで。
「藤木くんて……」
女の子に対してみんなにそうなのかな、なんて。
ほんのちょっと、邪推な気持ちも含めながら
「優しいんだね」
ちらりと見上げてにたりと笑う。
「寒かったんだろ?」
きっと、私の考えてることがわかったんだよね?
「あ、うん……」
「何だよ、嫌なら貸さねえぞ」
拗ねたような顔が可愛くて、思わず笑ってしまう。
「あ、いや、―――。
借ります、借ります。ありがとうございますっ」
初めて会話したのに、なんだか前から知っていたような……。
不思議な感覚が私を襲う。
なんか、懐かしい……っていうか、よくわかんないんだけど、すとんと言葉が入ってくるっていうか。
でも、すごく……嬉しいかも。
だって、同じクラスにもなったことないし……。
藤木くんが私の名前を知っていたことだって、びっくりしちゃったのに。
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