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でもね、―――。
私は、知ってるの。
一方的に見てたから、ずっと、―――。
私は一年生の頃から美術部に所属している。
あの日は何だか妙にデッサンに行き詰っちゃって。今日はもう帰ろうかなあって、何気なくグラウンドに目を向けた時。
夕暮れのグラウンドを駆け回る外で活動する運動部の生徒たちに交じって、袴で走る剣道部の部員たち。
何で藤木くんにだけ、目が行ったんだろう。他にも部活してる男の子なんて、たくさんいたのに。
藤木くんの走る姿に、目が釘付けになってしまった。
好き、とか、ひと目ぼれ、とかそういうんじゃないと思う。ただ、よくわかんないけど、……目が離せなかったというか。
彼の周りだけ、光が違って見えたんだ。
美術部の部室からは、武道場がよく見える。
剣道部は、団体でも個人でも全国大会で好成績を残すほどの強豪チームで、いつも遅くまで練習していた。
私たち美術部が帰宅する時間になっても、道場の明かりは赤々と灯り、竹刀の打音が校内に響いている。
実は、―― 練習している姿をこっそり見学に行ったことがあって。
たまたま夏休みに出された部の課題が『運動をする人』というものだったというのもあるけれど……。
あまりにも凛とした立ち姿が素敵で、くらくらするくらい格好良かったな。
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