出会い

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「雨、だいぶましになってきたね」 「そうだな」 屋根越しに空を見上げて 「雷も落ち着いたみたいだし」 腕を伸ばしながら、手のひらで雨を確認する。 「傘、貸してやるよ」 「えっ、いいよ、いいよっ。ジャージまで借りたのに」 「雨が止むまでここにいるつもりじゃないんだろ」 「大丈夫、―― うち、ここから結構近いの」 「……じゃあ、途中まで送ってくよ」 ――――!! 「え、でも……」 「どうせ濡れて帰るつもりなんだろ? わかってて一人で帰らせるわけに行かないっしょ」 ふふっと、空気が抜けるみたいに優しい笑みを浮かべて。 「じゃあ、行くか」 「……ありがとう」 納まっていたはずの熱がまた頬に戻ってきて、私はそっと俯いて緩んだ顔を引き締めた。 あと少し、―――。 一緒にいれる時間が伸びたことが、素直に嬉しかった。 藤木くんの傘に2人で入って歩き出す。 「ほら、濡れるって」 「あ、うん…。」 私の方に傘を傾けてくれる優しさに、きゅん、と胸がときめいた。 藤木くんのジャージを着て、二人一緒の傘に入る。 必然的に近寄るわけで……。 やばい、―――。 今日はすごい日だ。 さっきまで、雷にメソメソ泣いていたことなんて、忘れてしまいそう……。
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