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そういえば、―――。
あの男の子、どうしちゃったんだろう。
山門を出てから、そっと振り返る。
急にいなくなるんだもん。
あのまま帰っちゃったのかな……。
いやいや、そんなわけないよね。それなら絶対、気付くはずだし……。
藤木くんと話をしながらも、やっぱり気になっちゃって。きょろきょろと探してはみたけれど……最初からいなかったみたいに消えちゃった。
あれ、―――?
だけど、ちょっと待って。
ふと、男の子の声を思い出した。
『おねえちゃん、ぼくがみえてるの??』
そう、―――。
あの男の子は確かにそう口にした。
見えてるの?ってどういうことなんだろ。
私、夢でも見たのかな。
そんな……まさかね?
結局、―――。
藤木くんは家の前まで送ってくれた。
途中、また少し降り出した雨に私はほんのちょっと感謝したりなんかして。
「じゃ、また明日。
「ありがとう。」
「ほら、濡れるから早く入れって」
「うん。また明日ね」
ばいばい。
―――――。
玄関の扉が閉まったと同時に、私はへなへなと座り込んでしまう。
ばいばいって、――。
また明日ね、って、―――。
うわーっ、私、藤木くんと一緒に帰ってきちゃったんだ……!!
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