雨の余韻

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パパが私の体調にここまで過保護になるのは理由がある。 5歳の時、――。 ママが病気で亡くなってからしばらくして、私は気管支喘息を患って何度か入退院を繰り返していた。 付き添いが必要な小児病棟の病室で、ママを亡くした私に付き添ってくれたのは、ママの方のおじいちゃん、グランパだった。 グランマは、ママが子どもの頃に亡くなったって。 パパとママは若くして結婚したから、パパの方のおじいちゃんとおばあちゃんには結婚をかなり反対されたみたい。 そのせいか、今でも誕生日とクリスマス以外、連絡は全くない。 グランパが午前中に来てくれて、お昼ご飯を一緒に食べる。 それから散歩をしたり、膝の上で本を読んでもらったり、お昼寝をしたりして過ごす。 ママがずっと付き添ってくれる子どもたちよりもたくさん遊んでくれたし、ちっとも寂しくなんかなかった。 実際、グランパは他の子ども達にもママ達にもそして看護師さん達にも人気があって、私は自慢だったくらいだ。 パパは仕事が終わると急いで病室に駆けつけてくれる。グランパと入れ替わり、私が眠りにつくまでそばにいてくれた。 ちょうどみんなが愚図つき始めるこの時間。 他の子ども達が母親に我儘を言っているのを、私はパパに抱かれて冷めた目で見つめていた。 そんな中、聞いてしまったのだ。いや、聞こえているのはわかってて声に出されたんだと思う。
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