雨の余韻

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「顔、赤くなってる」 すっと私の頭にそっと乗せられた、藤木くんの大きな手のひら。 「えっ」 足を一歩踏み出したまま固まる、私。 「あの雨の日も赤くなってたよね」 「……っ」 「ちょ、固まんないでよ」 その手は下ろされ、藤木くんは焦ったように私の顔を覗き込む。 「ごめん、俺なんか悪いこと言った??」 「あ、いや、……そうじゃなくてっ」 ビクンと委縮した私に藤木くんは驚いたようだった。 でもさ、―― 藤木くんにとっては何でもないことなのかもしれないけれど。 「そう構えないで……ほしいな、なんて」 ……それは、無理。 いっそのこともう、ここから走って逃げ出したいくらいだもん。 「入江のこと、―― 何か気になるんだよね。 いきなりこんなこと言ったって、信じらんないと思うけど」 「し、信じらんないって、いうか……」 「もう少し話してみたいっていうか、うーん。 今日入江が武道場に体操服持って来たじゃん??」 「……うん」 「何ていうのかな。このままここで終わってしまうのが嫌だなって思ったっていうか……」 「……え?」 「とにかく入江と、―― もう少し話をしてみたいと思ったんだ。今、引き止めなきゃ、一生後悔するんじゃないかって」 「いいいっ、一生っ??」 思わず甲高い声を上げてしまった私を藤木くんは笑って見ていた。 その表情が…なんとなく弱々しく見えて、その先にあるものなんて、私には到底わからなかった。
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