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次の日、――。
「ちょい、ちょい、ちょい、ちょーいっ、み、こ、とっ。
昨日は藤木と一緒に帰ってたんだってぇぇぇーっ」
教室に入ると待ってたとばかりに瑛理奈に捕まった。
「……お、おはよ……」
「ちょっと、白状しなさいよっ」
「瑛理りんってば、声、大きいよっ」
慌ててスクールバッグを机に投げ置くと、興味津々の瑛理奈を引っ張って廊下へと連れ出した。
「何、何、何が起こったの??」
「いや、あの、―― ぐ、偶然ねっ……」
「偶然って、何よ?」
迫る瑛理奈のキラキラとした瞳に負けて、私はかなり要約して一昨日の出来事を話した。
「雨宿りねえ……」
「そう、そうなのっ」
それはそれで終わったこと。
一昨日は、たまたま、偶然に。
昨日もたまたま帰りに校門で一緒になったから、そのまま二人で帰ったのだと。
「取りあえず借りたジャージも返せたし」
「へええええ」
美術室まで迎えに来てくれたなんて……言えるわけがない。
「ね、―― 何で瑛理りんが知ってるの?」
「ああ、オカンに聞いたからだよ」
お、オカン ―――??
「オカンって瑛理りんのお母さん?」
「そっ。ウチ、藤木とは小学校まで一緒だったんだよね。家近いし、オカン同士仲良いの」
「そうなんだ……」
―――まさか、そんなところから……バレちゃうなんて。
思わず苦笑いで凌ぐ、私。
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