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なんだろう。
射すくめられたように動けない。
助けて、明路。
彼が何をしたわけでもない。
だが、動けなかった。
少年の手がベッドに向かって伸びる。
「や……やめて、その人、貴方の親なんじゃないの!?」
思わず叫んだ言葉に、彼は振り向き、きょとんとしたあとで、笑い出す。
こちらを見、なんで? と訊いた。
「そうじゃなきゃ辻褄が合わないからよっ」
「何をどう考えても、その固い頭じゃ、辻褄、合わない気がするけど」
少し気安くなった口調で彼は言う。
「今日はなんだか興がそがれちゃったな。
また来るよ」
そう素敵な微笑みを見せて出て行ったが、ときめくわけもなく、座り込む。
しばらくぼうっとしていて、そして、ロッカーに向かい、走り出した。
明路に電話をかけるため。
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