第四章 朝

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   病院の廊下を急いでいた明路は、目的の部屋へ辿り着く前に、誰かに腕を捕まれた。  そのまま、人気のない階段に引きずり込まれる。  振り返らないまま、 「行人……っ!」 と叫ぶと、彼は、 「あれ?  『服部くん』って呼んでよ。  君の大事な服部くん、みたいだろ」 と嗤う。  行人は絞めかねない勢いで、後ろから首にその細い腕を回してくる。 「あのオネーサンにああいう風に言っておけば、すぐ来ると思ったんだ」  無邪気にさえ見えるその顔を見上げて言った。 「……何をしに此処に来たの」 「決まってるじゃない」  行人のその言葉に、 「昌生さんは殺させない」 と言うと、彼は楽しそうに笑っていた。 「本当に愉快な人だね、貴女は」
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