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「あんな抜け殻、殺したって何?
もう二度と、湊昌生は甦らないよ。
貴女だって、もうわかってるはずだ」
明路は行人を見つめたまま、その腕を強く掴んだ。
「昌生はもう居ない方がいいだろ。
あんたたちにとっても。
いや、僕がやらなくても、いつかやるさ、あの男が」
「あの男って?」
「本当に何もわかってないんだね。
そんなところも可愛いと思うけど」
と行人は髪に唇を寄せてくる。
その手を離そうともがいたとき、上から声がした。
「此処に重病人が居るんだけど。
そこの幾ら呑んでも酔わない健康体な人間を抱っこしてないで、僕を抱いて、病室まで連れてってくれないかな」
真剣に話しているのだろうが、いつも些か間の抜けた感じのする口調。
見上げると、階段の上に、先輩が立っていた。
何故か、その足許には白い猫を従えている。
「な、なに、ウロウロしてるんですかっ」
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