第四章 朝

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「明路。  僕の見舞いには来てくれないわけ?」 「後で行こうと思ってましたっ。  さっさとベッドに入って寝てくださいっ」 「大丈夫だよ。  僕が死ぬ未来は見えなかったんだろう?」 「あのときはですよ。  そのあとは知りません!」 「つれないこと言うねえ。  まだ約束の膝枕してもらってないから、寝られないよ」  してないし、そんな約束……とマイペースな眉村に頭を抱える。  まあ、猫に聞いて、助けに来てくれたのだろうが。  と、言うことは― 「もしかして、またよく見えるようになってます?」 「また死線を彷徨ったからかなあ。  この猫も見えるよ」 と言う。  いや、死線と言うほどではないぞ、今回は、と思ったが。  まあ、此処に来たせいもあるのかもしれない。  長く彼が寝ていた場所で、幽体離脱していた場所だから、霊が見えやすいのかもしれない。  今の昌生と同じように、彼はずっと此処で眠っていた。
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