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行人はまたいずれ、植物状態の昌生の息の根を止めに来るだろう。
厄介なことになった。
本当なら、和彦に話すべきなのだろうが。
溜息をつき、屈むと、下に向かい、手を伸ばした。
ひょい、と肩に乗ってきたモノに、
「ねえ。
昌生さんの病室、ガードしててくれない?」
と言うと、
「……あんた、また何と話してんのよ」
と聡子が厭そうに言う。
彼女には見えない白い猫は、
「お前は頭がおかしいのか。
何故、私があれを守らなくちゃならない」
と言った。
ま、ご尤も。
「でも、昌生さんを助けることは、昌生さんが一番厭がることよ。どう?」
そこで、猫に溜息をつかれ、
「お前のやっていることはなんだか不毛だ」
と呟かれる。
行人が正しい気もするが、と言いながらも、
「まあいい。
付いててやろう」
と猫は言った。
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