第四章 朝

57/196
前へ
/2591ページ
次へ
   身体もないのに、わざわざ明路に運んでもらった白猫は、眠っている昌生の横、小さな台の上に載っていた。  まあ、載る必要も本当はもうないのだが。  ずっと眠っているせいか。  あのまま、歳をとっていないかのように見える。  もうこの世のものではない感じだ。  男でも女でも、好きにはなれない奴だが、奇麗な顔をしているな、と思った。  明路たちの奇麗さとはまた違う。  本当に、端整な、といった感じの凛々しい顔だ。  このまま、眠り続けているのかと思っていたが―  まあ、この状況を続けていても、誰にも良いことなどない。  特に明路に。  だから、聡子というあの娘は、いっそ、誰かが昌生の息の根を止めてくれないかと思っていたようだ。
/2591ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1023人が本棚に入れています
本棚に追加