第四章 朝

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「ちょっと手伝ったら、すぐ帰りますって」  黒い服を着た和彦は、あまり見たくなかった。  あのときを思い出すから。  消えてしまったあの未来。  昌生は、どちらの未来の方が救われたのだろう。  和彦は、どちらの未来の方が―  そのとき、ポケットに入れていた携帯が鳴り出した。  緊急の電話が入ってはいけないので持っていたのだ。 「あら、藤森。  どうしたの?」 『何処居るんだ、てめー』 「すぐ戻るって言ったじゃない。  法事よ、法事」  何処んちの法事だ、と言っている電話をそのまま切った。  ポケットに突っ込み、大皿を抱え直したとき、斜め後ろに立って、こちらを見ている喜佐子に気がついた。  振り向き、頭を下げるが、そのまま行ってしまう。  いつも、そう愛想が悪いわけではないのに、どうしたのだろうと思いながら、それを見送った。
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