7月 やまない雨はない、とか

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ユウくんの車の音が遠ざかっていく。 呆然とそれを聞きながら、最後に残された言葉を反芻した。 尚吾くんは確かに昨日、ユウくんのこと気にしていたと言っていた。 それはでも、ナツに聞かされた言葉から私の気持ちを誤解していただけで――。 私とユウくんとの間になんか、そんな風に思われるようなことは何もないはずなのに。 尚吾くんにちゃんと気持ちを伝える道を選ぶってことは、そういうことなの? ナツと話せば済む話ではなくて。 ユウくんとの間には、今まで以上に距離を置かないといけないってことなの……? 立ち止まっていたのはほんの数秒。 急に雨足が強まって、上から傘を押しつぶすみたいな勢いで叩きはじめて我に返った。 とりあえず、家に戻ろう。 濡れちゃってるし、ここにいても風邪ひくだけだ。 昨日小言を食らったばかりなのに、のんびりしていて門限を過ぎたら面倒だし。 無理矢理頭を切り替えて足を動かしながらも、動揺している理由が分からなかった。 ユウくんと、必要以上に仲良くした覚えはない。 苦手意識や恐怖心はなくなったと思うけど、今でもよく分からないし。 わざとなのか素なのか知らないけど、神経逆撫でするようなやな物言いばかりだし。 セ、セクハラも言うし! 煙草も――、 「……あ」 煙草とカビと――決して良い匂いではなかった、車内。 あれを不快に思わなかった理由に、不意に気が付いた。 あれは私にとって、懐かしい匂い、だったんだ。
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