4月 新しいこと

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19時頃には客足が引き始め、遅番のパートさんも次々あがっていく。 閉店までは社員さんと学生バイトで少ないレジをまわし、15台あるレジは順番に閉じていく。 締めたレジのお金とジャーナルをセットにして金庫に提出しにいくのが、この時間の私の仕事だ。 人手も客足も減った時間帯に、まだ1人でレジをまわせない私は他の作業をさせられるというわけ。 万が一の時のため、1回の運搬につきレジ1台分しか現金を持たない決まりだから、レジと金庫を何度も往復する。 入金用バッグに入った小銭が意外と重くて、この往復は地味に重労働だ。 そして腹立たしいことに、 「あー、もうそんな時間」 「……お疲れ様です」 レジからバックヤードへのルートが、青果コーナーを通っている。 「毎日毎日何往復も。ごくろーさん」 それは、半人前でレジに入らせてもらえない私への皮肉、なのか。 にやりと口角を上げたその人に、言い返す言葉は浮かばない。 「……急ぐので」 現金の運搬ルートは変更不可、寄り道もしてはいけない。 社内ルールだ。
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