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「言い過ぎたって謝ったじゃねえか。お前は何にも悪くねえから気にするなって。2回言わせんな、馬鹿」
前を見据えてハンドルを握ったまま、ユウくんはそう言った。
言われたことは理解している、けど。
「おめでたいって言った。したたかだって」
「――だからっ!」
「ううん、違うの。ユウくんは取り消してくれたの、ちゃんと分かってるけど。私が……自分で、そう思っちゃったから」
だから、分からなくなった。
ホントにそうして良いのかどうか。
ナツを――、どれだけ傷つけることになるのか。
私が吐いた嘘のせいで。
守りきれなかった約束のせいで。
話をしたところで、本当に彼女は分かってくれるのか。
私を許してくれるのか。
祝福、してくれるのか。
私が浮かれている間に能天気に思い描いていたのは……なんて自分勝手な望みだったんだろう。
車はハザードを出して、マンションの駐車場側の路肩に滑り込んで停まった。
同時に苛立ったようなため息が吐き出されて、びくりと身体が跳ねた。
「どうしたいの、お前」
「どうって……」
それが分からなくなって、私だって混乱している。
言葉に詰まって俯くと、ユウくんは追い打ちをかけるように続けた。
畳み掛けるみたいに。
「嘘吐き通してナツとの上っ面の友情守ったら満足? それが女同士の友情なのか下らねえ。それでタケはどうする。昨日何があったか知らねえけど、鈍いお前が気付いたくらいならアイツも当然両想いだって感じてる。期待させておいて振るのか。タケはナツと秤にかけられて負けたわけか。憐れ通り越して惨めだな」
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