284人が本棚に入れています
本棚に追加
「待ってってば! 一体誰の話して――」
いよいよ母の暴走がワケ分からなくなってきて、さすがに堪らずに割って入った。
きょとんとした母が投下した爆弾は、
「誰って、赤いジャージの彼。隠さなくたっていいわよ、送ってもらったんでしょ?」
……誤爆も甚だしい!
何故、私の相手がユウくん!!
「ジャージの人はただのバイト友達ー!!」
思わず全力の大声で否定すると、漸く母のマシンガンが止まった。
しばらくポカンと固まっていた母が次に口にした言葉は、
「……なあんだ、残念」
デジャウみたいに、ついさっきの自分の感情とリンクした。
母と父の結婚をお膳立てしたという上司さんと、母との間には何もなかったのが『残念』……。
ん? あれ?
なんだかんだ言いつつも、私と尚吾くんの仲が上手くいくよう背中を押してくれたユウくん――。
微妙にシンクロしていることに気付いて、少しだけ興奮した。
何も知らないはずの母が、やけに意味ありげに『残念』と口にしたから余計に。
私が『残念』と言った時には母がお腹をよじって笑い飛ばしたのと同様に、ユウくんと何もないことは、私にとっては別に『残念』でも何でもない笑い事だけど。
「と、ところで」
咳払いで取り繕いながら、ふと気になった点を尋ねた。
「なんでジャージの人が年上だって分かったの?」
むしろバイト先では、ひとくくりで同年代というグループだ。
ユウくんは確かに1つ上ではあるけど、普段からあまり、そういうつもりでは接してないんだけど。
最初のコメントを投稿しよう!