7月 やまない雨はない、とか

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「待ってってば! 一体誰の話して――」 いよいよ母の暴走がワケ分からなくなってきて、さすがに堪らずに割って入った。 きょとんとした母が投下した爆弾は、 「誰って、赤いジャージの彼。隠さなくたっていいわよ、送ってもらったんでしょ?」 ……誤爆も甚だしい! 何故、私の相手がユウくん!! 「ジャージの人はただのバイト友達ー!!」 思わず全力の大声で否定すると、漸く母のマシンガンが止まった。 しばらくポカンと固まっていた母が次に口にした言葉は、 「……なあんだ、残念」 デジャウみたいに、ついさっきの自分の感情とリンクした。 母と父の結婚をお膳立てしたという上司さんと、母との間には何もなかったのが『残念』……。 ん? あれ? なんだかんだ言いつつも、私と尚吾くんの仲が上手くいくよう背中を押してくれたユウくん――。 微妙にシンクロしていることに気付いて、少しだけ興奮した。 何も知らないはずの母が、やけに意味ありげに『残念』と口にしたから余計に。 私が『残念』と言った時には母がお腹をよじって笑い飛ばしたのと同様に、ユウくんと何もないことは、私にとっては別に『残念』でも何でもない笑い事だけど。 「と、ところで」 咳払いで取り繕いながら、ふと気になった点を尋ねた。 「なんでジャージの人が年上だって分かったの?」 むしろバイト先では、ひとくくりで同年代というグループだ。 ユウくんは確かに1つ上ではあるけど、普段からあまり、そういうつもりでは接してないんだけど。
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