6月 降らなきゃいいのに

6/79
前へ
/335ページ
次へ
「さぁさぁ! この勢いに乗って、キミらも後に続きたまえ!」 調子に乗ったアツシに突っ込みを入れるのは、これからはタケではなくてメグの役目になるのかもしれない。 早速メグに小突かれて渋い顔を見せたアツシのことを、その場にいたみんなが笑った。 ケイとユウくんは今日はいない。 「私、邪魔じゃない!?」とナツが何度も確認しながら、結局3人は最初に話していた通りカラオケに行くみたいで。 付き合いたてのカップルの中に快く受け入れられたナツは、力強くガッツポーズをしながら、 「告白のシチュとか台詞とかぁ。沢山聞き出してくるからねっ!」 とにこにこ笑って私に向かって宣言した。 「あはは、報告楽しみにしてる。行ってらっしゃい!」 「うん、またねぇ莉緒! タケも!」 お疲れ、ばいばい、と騒がしく一通りの別れの挨拶が済み3人が雨の向こうへ消えていくと、一気に静寂が戻った。 ううん、傘を叩く雨粒の音だけがいやに響いている。 私とタケの上で、それぞれ鳴る音が。 「付き合ってんだね、驚いた」 傘の下から見上げながらそう言うと、タケは目を細めて頷く。 「アイツ、ずっと前からメグに惚れてたからなぁ。上手くいったみたいで良かったよ」 帰ろう、と促されて、ゆっくり歩きはじめる。 さっきまでは遠慮するつもりだったのに、結局送ってもらう流れだった。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加