6月 降らなきゃいいのに

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雨に濡れた道路を走る車の音が、いつもよりもうるさい。 タケの傘は大きくて歩道を横に並んで歩くことも出来ず、雨音に邪魔されて届かない声では会話も出来ず。 結局国道をくぐる地下道に入るまで、私たちは無言を貫いた。 せっかく送ってくれているのにこんなんで、タケは楽しくもないだろうに。 ようやく雨の妨害から解放された地下道の薄明るい電気の元で彼を見上げると、嫌そうな顔ひとつ見せずに機嫌良さそうに笑っているから不思議だ。 「まだ半分も来てないのに大分濡れちゃったね。莉緒ちゃん大丈夫?」 「うん、私は……。ごめんね、バスならこんなに濡れないのに」 「え、まだ気にしてたの? いいってば、俺が勝手に送りたいの」 ――こう、好意的な言葉をくり返しながら、タケははっきりと恋愛感情としてそれを伝えてきたことは一度もない。 こんな関係を続ける内に彼を意識し始めているのはもう否定のしようがないのに、タケがくすぐったいことを言えば言うほどに、その気持ちにブレーキをかけようとしている自分がいる。 勝手に期待して、後で痛い目見るのが嫌なんだ。 こんな風に男の子と2人になることも今までなかったから余計に、ただ意識してしまってるだけかもしれないし。 「……アツシ、メグの呼び方変わってたね」 だからこうして、無難な方向へ話を逸らす。
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