6月 降らなきゃいいのに

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「母さん先に寝るからね。アイロン付けっ放しにしないでよ」 寝るのに眩しいからか、和室の引き戸を半分閉めながら分かりきったことを言ってくる。 現実に引き戻しておいて、その言い方って。 「分かってるよう、そんなこと」 思わず反論すると、それが気に障ったのか閉まったはずのふすまがまた開いた。 「あんた、毎日バイトバイトって帰り遅いけど。学校の勉強おざなりになってないでしょうね?」 うわ、しまった藪蛇だ。 だけど、こっちだってたまには言いたいことがある。 「ちゃんとやってるよ! 遅い遅いって言うけどさ、私これでも、みんなより早く帰って来てるんだけど!」 お母さんは厳しすぎる。 前から薄々感じてはいたけど、バイトを始めてから余計に思う。 勉強勉強、門限門限って。 みんなはもっと自由なのに。 私、悪いコトしてるわけじゃないのに! 「みんなって誰、言ってみなさいよ」 冷やりと、声のトーンが下がった。 良くない傾向だ。 だけど、ずっと我慢してきたこっちの勢いも止まらない。 冷静には話せない。 「バイト仲間だよ! ケイとかナツとかメグとか、中学の友達がいるって話したじゃない。他にも新しい友達がいるけど、どうせ名前なんて言ったって覚えないでしょうお母さんは!」 叩きつけるように放った言葉に、お母さんは怯みもしなかった。 それどころか蔑むような冷たい目で見てくる。 「それで? その『みんな』は残って何してるのよ」 「何……って、おしゃべりとか」 「そう言うの、世間一般では夜遊びって言うのよ」
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