6月 降らなきゃいいのに

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ぎり、と奥歯を噛みしめる。 別に、あっさりとこちらの不満を認めて門限をゆるくしてもらえるなんて、甘いことを考えていたわけじゃないけれど。 実際みんなはゲームセンターとかカラオケとか、本当は高校生が夜行っちゃダメって言われている場所へ向かう日もある。 少なくともうちの高校では違反とされてるし、多分それ以前に条例か何かでアウトだ。 だけど同級生がバイトしてるとことか、店側の対応がゆるい先をみんなは良く知っている。 ううん、そういう『夜遊び』じゃなくても。 ただ話しているだけでも、未成年が煙草吸ってたらそれだけでアウトだ。 何をしている、と聞かれて、はっきり言えない弱みは簡単に見破られる。 強気で反論できない自分が情けない。 それとも、そうなの? 私、みんなと一緒に『夜遊び』したいだけなの? 「なっちゃんメグちゃんって、一高に行った子たちでしょう。あんた、一高が何て言われてるか知ってるの?」 ――やば。 キレそう。 こういう考え方をするお母さんは、嫌いだ。 「市内一馬鹿と不良が集まる高校。悪い友達に感化されないでよ。そんな子ばっかり集まってるバイト先なら、もう辞めなさい」 大嫌いだ。 「一高馬鹿にしないで。少なくともお母さんよりマシな人間が沢山いる」 「莉緒! 親に向かって何てことを!」 「さっさと寝れば」 これ以上話など聞きたくもない。 顔も見たくない。 ぴしゃりとふすまを閉めてシャットアウト。 広げていたアイロンを手早くまとめて、リビングの電気を消して自室へ逃げ込む。 ドアを閉めた後ろから、怒鳴り声が聞こえた。 もう話にならない。 ――こっちに話をする気が無いのだから。
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