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お客様が多いんじゃない、開いているレジが……ううん、レジ担当の人数が、全然少ない。
別部署の社員さん何人かが応援に来てくれているけれど、彼らはルール上食品レジの金銭は扱えないことになっている。
だからいくら来てもらってもチェッカー側に入ってもらうしかなくて、レジの台数は増えない。
ついでに言うと、せっかく手伝いに来てくださっているのに申し訳ないけど、やはり別部署の方は扱いなれていないレジや商品に手惑う。
手入力パネルの商品キーの位置が分からなかったりで時間を取るし、割れやすい商品の扱いが雑だったり水漏れしそうな物を袋に入れるなどの気遣いが出来なかったり。
一緒にレジに入っている方もペースを乱されたり気を揉むので、『どんなに忙しくても他部署のヒトは私のレジには入れないで』とはっきり断っている人もいるくらいだ。
そういうのって多分、ピリピリした空気が口に出さなくても伝わってしまうから。
長い列を待たされているお客様だけでなく、それを捌くレジ側も、単に忙しさのためだけではなく、応援に来てくれた他部署の方とレジ担当の間が不穏に殺気立っている。
「新田さん!」
レジに入っていたパートの木下さんから声がかかり、急いで寄って行く。
見渡した限り、いつも仕事初めに指示を出してくれる食レジ担当の社員さんたちの姿も見えないのだ。
こういう場合はベテランのパートさんの指示に従うことになっている。
「ごめん、色々重なって人が全然足りないの。レジ1台、開けられるよね?」
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