6月 降らなきゃいいのに

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納得してもらえたのかどうかは置いといて、とにもかくにもユウくんのおかげで、無事ピーマンのお客様のカゴを流し終えた。 そしてお会計をしている間に――、何故か、スキャン台の方からピッピッと音が聞こえる。 え、え、ええ? なにやってんの!? この人!! ぎょっとしてそっちを振り返れば、ユウくんがスキャン台側の操作パネルに社員コードを打ちこんだところだ。 「今だけ入る、レジ」 彼はぼそりと、理解しがたいことを言った。 え、レジ応援……? 今さら? もう店内放送のBGMも通常モードに戻ってるのに。 てか、社員さんでもないのにこの人チェッカー訓練受けてるの? いやいやいや、それ以前に、この人今、急ぎの連絡で回ってきてたはず! なんで他のレジに連絡に行かないの!? もやもやを抱えたまんま会計を終え、商品をぎこちない手つきで流しているユウくんの隣に立つと、周りに聞かれないくらいの小声でぽそぽそと彼が説明する。 「値札付け替えたの、多分今の客だから。常習なんだアイツ。現場抑えられなかったからレジ見張ってたんだけど、遅れて悪かったな」 ――え。 もしかして、それ言うためにレジに入ってくれたの? そんなの、後でもいいのに。 「……って言うかあなた、レジ入れるの?」 「訓練中。社員登用の試験受けるから」 「ッ!!」 危うく声を上げそうになった。 そうか、この人……学生じゃないんだ。
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