第1話

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今日は何だか胸騒ぎというかなんというか、虫の知らせのような、そういったものがありました。 案の定、普段は滅多に鳴る事のないチャイムが鳴りました。 少しだけドアを開けてみると、何やら見知らぬスーツ姿の男。 ただ気になるのは、その男は異様に目つきが鋭いことでした。しかも、こんなスーツの似合わない人を私は今まで見たことが無かったのです。  その男はぶっきらぼうに「布団は要らないか。」と聞いてきました。どうやら訪問販売のようです。もう布団はあるし、こういった訪問販売は高額な値段を吹っかけてくると聞いたことがあるし、そして何よりその営業マンの発するオーラというものが何かとてつもなく暴力的で圧迫されそうだったので、その状況から少しでも早く解放されたいという気持ちでいっぱいだったのです。その為すぐ断ろうとしました。  その瞬間「ジョッワーッ」と失禁してしまいそうになりました。  な、な、なんとその男とは「矢吹ジョー」 だったのです。  そう、かの有名な劇画「あしたのジョー」の主人公として一時代を築き、未だ影響力を与え続けている、あの「矢吹ジョー」だったのです。  劇画のラストシーンではホセ・メンドーサとの激闘の末真っ白に燃え尽きた、と描かれていました。その為、矢吹ジョー死亡説といったものがまことしやかに語られてきました。 ところが、「矢吹君は同年代の子と同じように青春を謳歌するべきよ。薄暗いジムで殴り合いの練習なんて止めて世間並みの幸せを求めるべきよ。」と乾物屋の娘に言われて、ジョーが答えた「真っ白に燃え尽きたいんだよ。真っ白にさ。灰も何も残らねぇ様に真っ白に
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