プロローグ的な奴だな

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 太陽の光が鬱陶しくも地上を照らし、でこぼこした地面は、人が歩くには少々辛く、周りは緑が目立つ程一杯、つまり森の中。  その森の中でぐうたれているのが俺、  しかも、俺は人だった筈なんだが、今は何故か、うん、ホント、自分でも分からないんだが、凄い認めたくないが、そう、狼なんだよね。  鋭く尖った爪と牙、およそ狼とは思えない巨体、人だった頃は好きだった獣の毛、因みに色は灰色だ。  大きさは、そうだな~少なくても、ゾウよりも大きいぞ? あれの倍は大きい、これなら普通、森の中が窮屈と思うじゃん? けど大丈夫なんだなこれが、森の中の空間は案外広くて、俺ぐらいのでかさでも余裕のよっちゃん何だ。  で、そんな俺だが、この状況にはほとほと困っているんだよ。  まぁ話せば長い、と思ったらそうでもないかも……。  う~ん俺がこの意味不明な森の中に目覚める前は、普通の高校生だったんだぜ? そこら辺にいるふっつうの男子高校生。  それが俺、三竹 亜穂衣(みたけ あおい)だった。  この森の中に目覚める少し前、いつものくだらない学校生活、馬鹿だけど気の良い友達と一緒にゲーセンで遊んで、そんで帰って寝たら、ここ。はい、今ここ!  いきなり見知らぬ森の中、しかも、自分は人間ですらなく、でっけぇ狼、うん、意味が分からない。  だから俺はこうして森の中でぐうたれている訳なんだが……やっぱり駄目だよな~。  狼の手足を器用に使って、目や背中を掻いていると、小さな小人、もとい、人間が草の中から現れた。  人間は背中に木で編んだ籠を背負い、中には果物だろうか、赤や黄色と、多種多様の色があった。  残念な事に、男である。  短く刈り揃えられた赤髪の青年は、俺の姿を見て茫然としていた。  まぁそうだろうな~と俺は何処か他人事の様に思っていると、青年はやっとこの事態に気付いたのか、目をこれでもかと見開き、口をわなわなとさせ、指を俺に向ける。 「お、お、こ、こ、な」  は? お、お、こ、こ、な? あまりの事に混乱するのも分かるが、この青年の態度に俺は思わず笑ってしまった。 「ッ! クックック」
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