激動の王道革命

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何はともあれ、不良くんと爽やかくんが柊と友達になったという事で大変満足そうな灯月。 あとは可愛い系のゆるふわ男子がいれば完璧……ッッ、と拳を握る灯月に、浅葱は笑顔でさり気なく距離をとった。 「あさぎんあさぎん」 「ん?何、多々良」 柊の王道っぷりをかみしめている灯月を無視して、小声で話しかけてきた多々良に浅葱は耳を傾ける。 「ゆるふわゆるふわ」 「うん?」 多々良が指差す先には、何やらブツブツと腐った事を呟いている灯月。 それで多々良が何を言いたいのかわかった様子の浅葱の顔にはニヤァ……、と凶悪な笑みが浮かんでいた。 浅葱はその顔を隠す素振りも見せず、廊下側の教室の隅で話をしている3人のもとに向かう。 そんな浅葱を見たクラスメートからヒッ、という小さな悲鳴が聞こえるが、浅葱はまったく気にせずズンズンと柊のところに向かった。 「ねーぇ、柊くん」 「……あ、えーっと……。ウサギと仲がいい人」 名前を教えていないからか、振り返った柊は少し戸惑ったように言う。 どうやら多々良のあの仮面はものすごく印象に残ったようだ。 「うん、ちょっと頼みというかお願いがあるんだけどー、いいかなぁ?」 「なんだてめぇ」 「あ、マズイって菊沢」 両手を合わせてお願い、と首を傾げる浅葱に、菊沢―キクサワ―というらしい不良くんが眉間にシワを寄せてつっかかってきた。 それをクラスの爽やかくん、永村―ナガムラ―が少し焦った様子で止めに入る。 「で、柊くん。お願いなんだけどねぇ」 「おい無視すんな」 「ちょっとぉ、……もう、じゃぁ30秒だけ時間ちょうだいよ」 「なめてんのかてめぇ」 一体何がどうしてなめていることになったのか、浅葱は笑顔のままで、はて、と首を傾げた。 まぁいいや、と浅葱はとりあえず菊沢を無視して柊に向き直る。 「あのねぇ、あの子いるじゃない?あのゆるふわ男子」 「おい」 「……菊沢、ちょっと黙れ」 無視されたのが気に障ったのか、とうとう手が出そうになった菊沢を柊の透き通るようなテノールボイスが止めた。 そんな声にも驚いたが、意外にも口が悪いところにもっと驚いた浅葱。 顔には相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべているが。
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