激動の王道革命

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綺麗な芝生に噴水に池に森林帯。 田舎の風景から一変、ガラリと変わった校内の雰囲気に内心驚きながらも黒髪の男は歩いていた。 校門から校舎までの長い道のりに若干イラつきながらも、地図によればこの角を曲がれば校舎が目の前に見えるはず。 「……行き止まりかよ!!」 思わず手に持っていた地図を地面に叩き付け、ワカメみたいにクセのついた黒髪をガシガシと乱暴にかきむしる。 なんでだ、どこだここ、と若干パニック状態に陥っていると、いきなり後ろから肩を叩かれ振り返る。 「あなた、が……て、転校生……ですか……?」 肩を小刻みに震わせているところを見るに、先刻の男の行動の一部始終を見ていたらしい。 「……あぁ、転校生の柊……です」 笑うのを必死で堪えているのはいいのだが、必死すぎて目尻に涙まで浮かべて口元をヒクヒクさせるくらいならいっそ爆笑してもらったほうがいいと思う男……柊―ヒイラギ―だった。 しばらく無言が続き、笑いがおさまったらしい男は口を開いた。 「私は片桐 紘一。河楽多高校の生徒会副会長を務めています」 片桐 紘一―カタギリ コウイチ―と名乗った生徒会副会長は、そう言ってニッコリと笑った。 日本人らしい真っ黒な目に、サラサラなクリーム色の髪が風に煽られて揺れている。 ノンフレームの眼鏡が妙に似合っていて、知的な印象を受ける。 そんな片桐は、柊に握手を求めて手を差し出した。 「……はぁ……」 柊はそれに応えて手を差し出し、握手を交わす。 その後、転校生の柊を迎えに出てきていたという片桐に高校の校舎までの案内を頼み、これで迷わなくて済む、と安堵のため息をついた柊。 それを見て、案内しながら片桐がまた笑いを堪えていた事は、柊にバレていた。
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