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会社では隙も見せずクールな印象が強い遠野君だけど、この反応はそれが一瞬崩れるので面白い。
思わず吹き出してしまった。
「さあ先輩。試練の披露宴、頑張りましょうね」
「遠野君って本当、一言多いよね」
「良いデータ待ってます」
「はあ?」
頭上で教会の鐘が鳴り響く。
始まりを告げそれを祝う鐘の音。
そこに埋もれそうだった遠野君の言葉を、私は聞き逃さなかった。
「データって……まだ人のこと観察するつもり!? やめてよっ」
「嫌ですよ、勿体無い」
「勿体無いとかそういう問題じゃ……。ちょっと遠野君! 聞いてるの?」
「ええ、一応」
楽しげな表情でスタスタ歩き出す遠野君を、私は小走りで追いかけた。
今日はまだ、傷心的な瞬間を何度も味わうかもしれない。でも、この生意気で悪魔気質な後輩がいたらそれも少しは紛れるかも――?
そう考えたら、可笑しいけどホッとしてる自分がいて。
「変なの……」
前を行く遠野君の背中が頼もしく見える……なんて、ね。
すると、そんな私の心を読んだかの様に、遠野君は振り返り。ニヤリと意地悪な笑みを口元に浮かべてから言った。
「先輩。俺に惚れても、良いんですよ? なんなら一生観察してあげましょうか?」
「ほ、惚れるか馬鹿! 年下なんか興味ないし……先輩を揶揄うんじゃない!」
「動揺してる動揺してる」
「してない!」
からからと笑う遠野君を追いかける。
明日、目が腫れたらどうしようと考えてた自分はもうどこにもいなかった――。
END
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