side 渉

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クローゼットから音がした。 「…………」 ゆっくり振り替えって、一気にクローゼットを開ける。 「あっ……」 カタカタ震える兄さんが、掛けられたスーツのジャケットらの下に座っていた。 俺にビリビリに裂かれたシャツを着ていたが、下は何も履いていない。 「ただいま。兄さん」 もう一度そう言うと、逃げ場のないクローゼットで後ろに逃げようと足を動かした。 「なんで『おかえり』って言わないの?」 「く、来るなっ」 顔を両手で隠す兄さんの腕を掴んだ。 昨日、俺が掴んだ部分が赤い。 足の太股も、俺が無理矢理開かせた部分に赤い痣が浮かんでいる。 それが艶かしくて、変な気分になってくる。 「なんで言わないの?」 「ひっ」 掴んだ腕から見えたのは、泣きはらした真っ赤な目だった。 ――肌が白いから余計によく浮き上がる。 「遅くなってごめんね。ただいま」 そう笑うのに、兄さんの目が涙で滲んできた。
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