side 渉

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「渉、昨日はどこにいたのー?」 欠伸をしながらだらだらと歩いていたら、後ろから腕に絡まってきた細い腕。 綺麗にネイルされた爪。 その爪から上を見ると綺麗にパーマがかけられた女。 よく俺を泊めてくれている女の一人だとすぐに分かった。 「兄貴のとこ」 特に腕を振りほどく事もしなかったら、女は優越感からにっこり笑い、見せつけるようにしなだれかかる。 「あら、お兄さんなんて居たんだ」 「あー。期待しないよーに忘れてたんだけど」 「良かったじゃない。じゃあ引き取って貰えるんだ」 「一応、昨日はそう言ってたな」 「――じゃあ私の役目は終わりかしら?」 誘うような艶を含んだ甘い声に、ついついニヤケてしまう。 「お前一人に絞ろっかな」 「あっははは。信じられなーい」 悪い気はしてないのか機嫌よく笑う。 単純で、簡単に転がせる関係は楽で良い。 執着するのは、兄さんだけでいい。
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