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「俺はつらい。苦しい。逃げたくてどうしようもない。おまえが癒して落ち着いた沙良なら手が出せるのに、おまえがいないと悪化を招くばかりだ。
おまえはずっといなかった。けれど、おまえがいなくなっても元に戻るものは何もない。
俺の言い分聞かずに勝手に引きこもるな」
俺はずっと言いたかった言葉を全部話してやった。
オリジナルは黙って俺を見ていた。
俺の言いたいことが伝わったのか謎だ。
表情が乏しい。
また虐められるようなやつになりそうだ。
こいつはこいつで、沙良のようにならないように、感情の大きな起伏を消したんだろう。
俺という別の人格をつくって。
「大丈夫。君は強いから。生きていけるよ」
伝わっていない。
「俺を決めつけんじゃねぇ。俺をそういうやつに置きたいのはおまえだろ。俺は強いからおまえは弱くて引きこもるってことか?おまえは俺に甘えてんだろ。この愚図。弱虫」
「甘えてるよ。君がいたから僕は壊れなかった。いや、壊れたけど、沙良とは違った壊れ方だ。
人間は弱い生き物だね。心なんて体より脆いのかもしれない。
…沙良と無理に接する必要はないよ。……中原がいいならあげてもいい…よ」
オリジナルは何を思ったのか、少し不満ではあるがといった様子を見せて俺に言う。
「なんで芙由が出てくるんだよっ!」
「中原に手を出そうとしたのは見ていたよ。…いっぱい泣いて、中原は僕を忘れてしまえばいいんだ。君は僕でもあるから、君が中原に近づいたら忘れられなくなるんじゃないかって思ったけど…。中原には君は君にしか見えてない。だから…」
「うるせぇんですよ。おまえを呼び出そうとして、おまえの希望に反したことをしただけだろーがっ。
おまえと話しているとイラつくんですけど」
俺は頬をひくつかせて、額に青筋たってると思う。
のらりくらりと俺のすべてをかわしやがる。
俺にはこいつの態度はそうとしか思えない。
「君も僕に甘えているの?」
更にイラついた。
一発ぶん殴ってやろうとした。
近づくと、俺の背はオリジナルの胸にも届かなかった。
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