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俺は数日、毎日のように芙由の部屋に忍び込んで、芙由にオリジナルを呼ばせた。
全然出てこなくて。
あまりにも芙由がオリジナルばかり求めてくれることに嫉妬したりもして。
俺は沙良のところへいってみる。
沙良の状態はよくなっているらしい。
それでも以前の沙良とは程遠い。
沙良の親に顔を合わせても何を言われることもなく、俺はその部屋にいく。
扉を開けると、沙良は絨毯に横になって塗り絵をしていた。
そんな沙良を見たくないともいう。
だから会いたくなかったとも思う。
ただその白かった髪はまた色を戻してきているらしい。
「いらっしゃい、カズくん。ちょっと待ってね。ここ塗り終わるまで」
沙良は足をばたばたさせながら、楽しそうに幼児の色塗り。
塗り方も色使いも幼児。
描く絵も幼児。
…自分が守ってやれなかったもの。
俺は沙良の部屋に座って、沙良の塗り絵が終わるのを見ていた。
深く意識を途切れさせたくなって、逃げたくなっても、オリジナルが出てきやがらない。
「……リンちゃんのほうが遊んでくれる。カズくん、あたしといるのつらい。リンちゃんにかわっていいよ」
沙良はわかったように言ってくれる。
まるで俺が試されているみたいだ。
頭が痛い。
逃げたい。
沙良は塗り絵していた手を止めて、色鉛筆を投げた。
手元の塗り絵を握り潰して、破っていく。
色鉛筆を手にしたと思えば、絨毯に突き立てて、芯を折る。
何がしたいのかわからない破壊活動。
俺は沙良の手を握って止めた。
沙良は喚く。
奇声をあげるように喚きまくる。
俺はオリジナルがそういうときに沙良にしていたことに倣って、沙良が落ち着くように頭を撫でてかわいがってやる。
そのうち沙良は落ち着いてくれて、俺の腕の中に寄りかかってきた。
俺はその背中を撫でる。
つらい。
苦しい。
またこのまま二人で死のうかなんて言いたくなる。
今度は失敗しないように、沙良を殺して俺も自殺しようか。
……こうなるから、俺は…だから…。
俺がオリジナルという、俺のかわりに生きるやつを求めている。
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