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消えるなら俺が消えたいんだ。
おまえはよくわかっているはずなのに、俺を置いていきやがった。
沙良を持て余した俺は、沙良に薬を飲ませて無気力に落とす。
今なら死ぬための薬はたくさんあると言えるのかもしれない。
俺は沙良の薬をすべて出して、ざらざらと喉の奥へ水で押し込む。
出てこい、オリジナル。
俺は壁に寄りかかって目を閉じる。
目を開けると闇の中だった。
ここがどこかわからない。
やっと死ねたのかもしれない。
「死ねないよ。そんな柔な体に母さんは生んでない」
そんな声が聞こえてきて、闇の中、気がつくと俺がそこにいる。
俺…じゃない。
姿は俺なのに、その表情は柔らかい。
ふわりと笑う。
「初めまして、というのもおかしいね。僕が鈴だよ。ここは僕たちが引きこもるところ。深層心理の奥底かな?」
オリジナルもよくわかっていないようだ。
それでもこれがオリジナルらしい。
目に見えるのは不思議な感じだ。
俺は鏡を見ているのかもしれない。
「オリジナル、早くここから出ていけ。表があいてるってことだろ?」
「そうみたいだね。僕も君もここにいるから。……息は…まだしてるみたい。君が表で生きなよ。僕は消えたくても消えられない。ここにいるだけ。
君は…ここに飛び込んできたんだよね、あの日。そのまま膝を抱えて動かなくて。僕が見に行ってみたんだっけ」
オリジナルは上のほうを眺めて、俺も釣られるように上を見る。
そこにはなにもない。
俺はこんな奥底まであまり沈むことはなかったのかもしれない。
沙良と死のうとして死ねなかったときを除いて。
「……俺と沙良はもうダメなんだよ。俺がそばにいると沙良は安定しない。俺は沙良を癒せない。
あの時…、沙良と死のうとしたあの時に、もしも生きようと考えられていれば、今とは違ったかもしれない。
俺は逃げようとした。沙良と一緒に。
逃げられなかった。
この世界から」
俺はオリジナルを見て、オリジナルも俺を見る。
「おまえはまだ8才くらいの人生経験しかないんだろう。俺の中から物事をたまに見るから、何も知らないわけでもないんだろうけど。
いくらまわりに反対されなくても、俺の心がもう沙良を支えてやれない。それが逃げてると思うなら思えばいい。でもな、俺が沙良の近くにいても最悪なことにしかならない」
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